アルミの特徴や特性をはじめ、
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アルミニウムは軟らかく、展伸性に富むが、用途によってさらに強度を高めるなどの性質を改善する必要がある場合には、種々の元素を加えたアルミニウム合金として使用される。 アルミニウム合金は板、箔、形材、管、棒、線、鍛造品などの展伸材、鋳物、ダイカストなどの鋳造材に大別される。 アルミニウム合金の分類を以下、表に示す。
展伸材と鋳造材はそれぞれ非熱処理型合金と熱処理型合金に大別される。 非熱処理型合金は製造のまま、あるいは圧延、押出し、引抜きなどの冷間加工によって、熱処理型合金は焼入れ、焼きもどしなどによって、それぞれの所定の強度を得るものである。
ただ、熱処理型合金の場合でも、熱処理によって得られる強度よりさらに高い強度を得るため冷間加工することがあり、非熱処理型合金の場合にも、焼なまし、安定化処理のような熱処理が施されることがある。
さらに、これらの合金は主要添加元素の種類によって分類することができる。 個々の合金の特性は各合金系のなかで類似性を示すので、この分類を理解することは使用材料を選択するうえで便利なことが多い。
JISでは個々のアルミニウム合金材料に次の例に示すような表示で呼称をつけている。
最初のAはアルミニウム合金を示し、続く4桁の数字は合金分類を示す。この4桁の数字は合金名にならって表示され、第1位の数字は合金系を、第3、4位の数字は個々の合金の識別を示すが、合金系の第1位が1の場合、すなわち純アルミニウム系材料では純度を示す。第2位の数字は0が基本合金を示し、1以降の数字については、基本合金の改良また派生合金であることを示す。 ただし、わが国で開発され、国際アルミニウム合金に相当する合金を見出せない場合は第2位目の数字に代えてNを記す。
4位の数字に続いて1~3個のローマ字が附されるが、これは材料の形状および製造条件を示す記号、あるいは寸法許容度を示す等級記号である。 ハイフォンに続くHまたはTを冠した数字は材料の加工硬化状態または熱処理状態などの調質を示す質別記号であるが、他にF、Oなどの文字が使用される。展伸材の形状および製造条件を示す呼称の記号とその意味を表1.1に示す。
JISによる鋳造材の呼称例を次に示す。
(AC4C鋳物に対応する地金記号の例:<.1>および<.2>は純度区分を表し、<.2>が高純度ベースの地金である。)
最初のAは展伸材と同様、アルミニウム合金であることを示す。Aに続くC(Casting)、DC(Die Casting)の記号は製品記号でそれぞれ鋳物、ダイカストであることを示している。製品記号に続く1、2、3・・・・・の数字は添加元素による種別を示す。数字の次に続くA、B、Cなどの記号は同一合金系の中で合金元素の添加量が異なることを示す。
質別記号は展伸材と同じ要領で使用される(表1.3参照)。
アルミニウム合金のおもな性質は添加元素の種類、量によって影響される。したがって材料の選択にあたっては個々の使用目的に応じて最適な性質をもつ合金を選ばなければならない。
代表的なアルミニウム合金展伸材の一般的性質を表1.2に示すが、合金系ごとに類似な性質をもつ。
1000番台の表示は工業用純アルミニウムを示し、1100、1200が代表的で、いずれも99.00%以上の純アルミニウム系材料である。1100は陽極酸化処理(アルマイト)後光沢を良好にするCuが微量添加されている。1050、1070、1085はそれぞれ純度99.50、99.70、99.85%以上の純アルミニウム材料であることを示す。この系の材料は加工性、耐食性、溶接性などに優れるが、強度が低いので構造材には適さない。 しかし、強度を要しない家庭用品、日用品、電気器具に多く用いられる。
純アルミニウムに含まれるおもな不純物はFe、Siであるが、不純物が少なくなるにしたがって耐食性が向上し、陽極酸化処理後の表面光沢が改善される。 このため、化学、食品、工業用タンク、装飾品、ネームプレート、反射板などに使われる。また、Fe、Siの量によってプレス成形性が影響されるため、その量、比を合金元素と同じように制御することも行われる。なお電気伝導性、熱伝導性にも優れるため、1060、1070は送配電用材料、放熱材として多く用いられている。
ジュラルミン、超ジュラルミンの名称で知られる2017、2024が代表的なもので、鋼材に匹敵する強度を持つ。 しかし比較的多くの銅を含むため耐食性に劣り、腐食環境にさらされる場合には十分な防食処理を必要とする。航空機用材料として表面に防食を目的に純アルミニウムを合わせ圧延したクラッド材が使用されている。2014は高強度鍛造材として広い用途をもっている。
溶融溶接性は他のアルミニウム合金に比して劣るため結合にはおもにリベット、ボルト接合、抵抗スポット溶接が行われる。切削性は良好で、特にPb、Biを添加した2011は優れた快削性合金として機械部品に多く用いられている。
3003はこの系の代表的な合金で、Mnの添加により純アルミニウムの加工性、耐食性を低下させることなく、強度を少し増加させたものである。器物、建材、容器などに広い用途をもつ。
3003に相当する合金にMgを1%程度添加した3004、3104は、さらに強度を増加させることができるのでカラーアルミ、アルミ缶ボディ、屋根板、ドアパネル材などの材料として需要が多い。
4032はSiの添加により熱膨張率を抑え、耐摩耗性の改善を行ったもので、さらにCu、Ni、Mgなどの微量添加により耐熱性を向上させ、鍛造ピストン材料として用いられる。
4043は溶融温度が低く、溶接ワイヤー、ブレージングろう材として使用される。また、この合金はSi粒子の分散により陽極酸化処理皮膜が灰色呈するためビル建築の外装パネルにも使用されている。
Mg添加量の比較的少ないものは装飾用材や器物用材に多いものは構造材として使用される。したがって合金の種類が多い。 Mg添加量の少ない合金としては装飾用材、高級器物として用いられる5N01、車輌用内装天井板、建材、器物材として用いられる5005が代表的なものである。
中程度のMgを含有するものとしては5052が代表的で中程度の強度をもつ材料としてもっとも一般的なものである。 5083はMg含有量の多い合金で比熱処理合金としては最も優れた強度をもち、溶接性も良好である。 このため、溶接構造材として船舶、車輌、化学プラントなどに使用されている。
この系の合金は冷間加工のままでは強さがやや低下し、伸びが増加するという経年変化を示すので安定化処理が行われる。 海水や工業地帯の汚染雰囲気に強く、外観を問題にしなければ防食処理を施す必要は比較的少ない。 また、5083のようにMgを多く含むものは過度の冷間加工をあたえたまま、高温で使用すると応力腐食割れを生じることがあるので、通常、構造材としては軟質材が使用される。
この系の合金は強度、耐食性とも良好で、代表的な構造用材として上げられる。 ただ、溶接のままでは継手効率が低く、ビス、リベット、ボルト接合による構造組立が行われることが多い。
6061-T6は耐力245N/mm2以上でSS400鋼に相当し、設計上、たわみを問題としなければ、同等の許容応力が取れるという利点がある。鉄塔、クレーンなどに用いられる。6063は優れた押出性を備え、建築用サッシを中心に、6061ほど強度を必要としない構造材として使用される。 6N01は6063と6061の中間の強度を有する合金で1982年にJISに登録された。
アルミニウム合金のなかで最も高い強度をもつAl‐Zn‐Mg‐Cu系合金と、Cuを含まない溶接構造用Al‐Zn‐Mg合金に分類できる。 後者はわが国では、いわゆる三元合金として親しまれている。Al‐Zn‐Mg‐Cu系合金の代表的なものは7075で、航空機、スポーツ用品類に使用されている。
Al‐Zn‐Mg合金は比較的高い強さをもち、溶接後の熱影響部も自然時効により母材に近い強さに回復するため、優れた継手効率が得られる。 7N01がその代表的合金で溶接構造用材料として鉄道車輌などに用いられている。 なお、この系の合金は熱処理が適切でない場合には応力腐食割れを生ずることがあるので注意する必要がある。このためにJISに示された標準熱処理条件よりは過時効となる条件で焼き戻しが行われることもある。
アルミニウムにLiを添加すると、密度が小さくなり、ヤング率は増大するため、理想的な低密度・高剛性材として航空機その他大型構造用のなどとして注目され、Al‐Li系、Al‐Li‐Mg系、Al‐Li‐Cu系、Al‐Li‐Cu‐Mg系などが実用化を目ざして開発されている。
ほかに8000系合金として国際登録されている急冷凝固粉末冶金合金やその他の新技術の研究とともに新合金が数多く開発されている。
鋳造材は展伸材にくらべて使用されている合金成分が各国で異なっている場合が多く、添加元素のわずかな違いで別の種類とみなされるものが多い。
アルミニウム合金は冷間加工、溶体化処理、時効硬化処理、焼きなましなどによって、強度、成形性その他の性質を調整することができる。このような操作によって所定の性質を得ることを調質といい、調質の種類を質別という。 アルミニウム合金の性質は質別によって著しく変わるので材料の使用目的、加工方法により最も適したものを選ぶことが重要である。JIS規格に規定されている質別とその記号を表1.3に示す。